カーネーション
ノベルSS1>へのもへ
Mebius Room
  1

青年「ん……」
少年「きみはいま、ここはどこ、と思っている」
青年「……あ?」
少年「そしていま、私は誰、と思っている」
青年「いや……おまえ誰?」

  2

少年「あれ? not記憶喪失だ。失敗かー」
青年「その手元に握るハンマーはなんだ」
少年「当たりどころが肝心だね、コレ。ブンブブーン!」
青年「危ねぇだろ、ばかっ!」
少年「なんて言葉の暴力……」
青年「で、ここはどこだ? おまえは誰だ?」
少年「ここはアパートの一室で、僕はその住人『玉藻平和』。『もへ』と呼ばれたい年頃だよ」
青年「玉藻」
もへ「なんだもへ?」
青年「何故にオレはここにいるのか」
もへ「きみは自分のコトも分からんのかー!」
青年「分からないな」
もへ「僕が誘拐したのさあ!」
青年「な―――!?」
もへ「そろそろ自己紹介しておくれよ、三戸昇(さんのへのぼる)くん」
青年「知ってるじゃねぇか。しかも振り仮名まで」
もへ「じゃあキミは『への』ね」
への「勝手に決めやがるな」
もへ「じゃあ貴方は『への』ですね」
への「丁寧に決めやがるな」
もへ「なんだいなんだい! プンププーン!」
への「オレは帰るぞ。玄関どこだ」
もへ「出口なんてないよ!」
への「ンなワケあるか」

  3

への「どこにもねぇ……。つかこの畳部屋しかねぇ……」
もへ「密室ってヤツだね。イヤバカン」
への「なんなんだこの不思議空間は?」
もへ「可能性は三つ。本当は出口があるか、世界はこの部屋だけになってしまったのか、へのが夢でも見ているのか、なんかこういう空間なのか」
への「奇天烈な意見ばかりだな。つーか四つあるし」
もへ「まあまあ。へのが出られないコトには変わりないのだから落ち着いて」
への「落ち着いたら永久に解決出来ない気がする、却下」
もへ「六畳一間の部屋、時は夜更け。ふたりの人間が居ればやることはひとつだろう、へのへのん」
への「色々と無視して夜更けだったのか」
もへ「正確に言うと午前一時三十分」
への「……家に帰る」
もへ「へのは人質だからダメだよ。僕に身代金をくれないと帰れない仕組み」
への「は? 誰に要求してるんだよ、オレは一人身だぞ」
もへ「うん、知ってる。だからへのに要求してるのだ」
への「はぁ?」
もへ「誘拐の対象に身代金を求める斬新な犯罪。警視総監もびっくり」
への「……で、オレの財布は?」
もへ「への宅の机の上に」
への「じゃあ払えねーじゃねぇか」
もへ「しまったァ!」
への「馬鹿者かおまえは……」
もへ「あれだねー。車内に鍵を置いたままドアをロックしちゃった状況下にそっくりだね」
への「似てるようでサッパリ違うぞ」
もへ「細かいコトとか気にしないで、パーっと行こうぜェ!」
への「おまえも落ち込めよ。身代金はゲットならずなんだから」
もへ「それはもういいじゃん。別にお金に困ってないしさ、僕」
への「なんだそれ! なんだそれ!」
もへ「えふふー」
への「……いいからもう大人しく家に帰せ、そしたら警察には通報しないでやる」
もへ「むむー。仕方ないなぁ。少しどいて」
への「ん?」
もへ「畳返し!」
への「うお!?」
もへ「道は開かれた」
への「……この階段を下ればいいんだな?」
もへ「うん……ばいばい、だね……への……」
への「あぁ。永遠にな」
もへ「ぐす……うぐ……への……へのぉ……」
への「あ? おまえ泣いてんのか?」
もへ「えぐ……僕、いい子でいるからね……?」
への「あぁもう! あばよ!」

  4

への「……ったく、なんなんだアイツは」
への「……まぁいい。これで家に帰れる」
への「お? やっと階段が終わったな」
への「……この扉を開けば外か。つってもどこに出るやら……」

もへ「ひとり暮らししてると独り言増えるねー、へのりん」
への「……なんで押入れに繋がってるんだ、ずっと下っていたと言うのに」
もへ「上ってるようで下ってるメビウスの輪」
への「……だから説明になってないぞ」
(ss1-3.html/2003-06-16)


/灰かぶり姫のロンドへ
short short1
01 カノンコード
02 恋の準備運動
03 へのもへ
04 灰かぶり姫のロンド
05 蜻蛉の翔べない日
06 そらのうた
07 カミナシノセカイ
08 琥珀のマナ娘
09 ラストテクノロジー
10 イノセントソネット
11 ノーバディノウズ・ミレニアムアーク
12 忘却のアルケミスト
13 山梔子のスケアクロウ
14 ノーバディノウズ・ワールドエンド
15 イノセントカスタネット
16 ロストノスタルジー
17 群青色の盟約
18 カナシミノセイカ
19 そらなきのうた
20 夏の虫
21 夜明けの魔法使い
22 へのもじ
23 道行きの詩
24 マイノリティファントム