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ノベル>SS1>恋の準備運動 | ||
Dramatic Syndrome
EX 放課後の校庭の片隅では サッカー部が毎日のように練習をしている 部員は確か二十五人前後だったか 実際来ている人数はその半分くらいだけど 無理をしないエースストライカーや オフサイドを連打するゴールキーパーなど とても愉快な仲間たちが日々のドラマを繰り広げている そんな彼等にタオルでも渡してあげれば それなりのドラマが始動したりするんだけど ―――あぁ、あたしはドラマを観ない人だから あたしは変な奴に恋をした 彼はいつだって朝礼台の上に座りながら空を眺めていて 呆けているあいだにボールが彼の頭にクリティカルヒットしたりするわけで おまえは何故に練習をしないのかと先輩にどやされる中 やっぱり空を眺めていたりする そんな外れた男 成績も運動神経もパッとしない 病気持ちだとか 勇者の血筋だとか そういう際立った設定があるわけでもなく もちろんお金持ちでもなければ 特別ハンサムというわけでもない 呆けて空を眺める彼を、同じく呆けながら見つめたりして そうしているあいだに一ヶ月が経った そんなあたしを見て恋の告白をしてきた男子がふたり居て あたしは優越感に浸りながら断ったりして そういう思春期的な心を十分に育ませたあとで いつの間にか 彼に告白させたくなった そんな自惚れ混じりの黒い心も ミネラルウォーターのように純粋な彼の背中を見るうちに薄れては 焦がれているのはあたしの方だと気付いて 気付いたから気付いていない振りをして 「好きな人、居る?」 「……保健の先生が好きです」 「マジで? 禁断の恋愛じゃん」 「年下なんですけどね。あなたは?」 「んー。あたしは……」 恋話の終わりに彼の名前を出してみれば エクスクラメーション! あたしの隣で、当のご本人がリフティングをしていたわけですよ ある意味、ドラマティックと言えなくもないけど 当然普通に聞き流してくれたわけで それからも彼は変わらず空を眺めているのだけど あたしは変わらずそんな彼を見続けることには 少々の無理があるもので これはもう告白するしかないんじゃないかと そう思った夜には 色々考えたりもしたものです 好きだなんて気持ちは 言っちゃったら本当になるんじゃないか だからきっと 大切なのは勢いなのかもしれない そして それが永遠の愛になったりするのかもしれないし 甘酸っぱい思い出のひとつに埋もれるのかもしれないし そういうものが人生だ なァんて悟っちゃったりできるかもしれないのだ ということで 長い長い夜を越えて 次の日になって 休みの日だったから ブランドもののTシャツに 七分丈のジーパン 登校時に選んだりしないお気に入りのスニーカーを履いたりして ゆっくりとゆっくりと 呆けた彼の姿を目指す 朝礼台の前に着いて 高らかに告白しようとしてみましたさ だっていうのに 彼はどこにもいなかった サッカーの練習試合に混じっているわけでもなくて 家に帰っているわけでもなくて 掃除当番で遅れているわけでもなくて なんかね 転校しちゃってた そうくるとはねー 伏線のひとつも用意しないだなんて サービス悪いよね 本当にさ うん もちろんそれからも大差ない日々で それから二ヶ月経って またもふたりに告白されちゃったりしたんだけど そのうちひとりは女子だったりしたんだけど いつになったらきみは、告白させてくれるのかな (ss1-2.html/2003-05-02) /へのもへへ |
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01 カノンコード 02 恋の準備運動 03 へのもへ 04 灰かぶり姫のロンド 05 蜻蛉の翔べない日 06 そらのうた 07 カミナシノセカイ 08 琥珀のマナ娘 09 ラストテクノロジー 10 イノセントソネット 11 ノーバディノウズ・ミレニアムアーク 12 忘却のアルケミスト 13 山梔子のスケアクロウ 14 ノーバディノウズ・ワールドエンド 15 イノセントカスタネット 16 ロストノスタルジー 17 群青色の盟約 18 カナシミノセイカ 19 そらなきのうた 20 夏の虫 21 夜明けの魔法使い 22 へのもじ 23 道行きの詩 24 マイノリティファントム |