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ノベル>SS2>おじいさんのロボット | ||
Grandfather's Clock
1 昔のことか、未来のことか。大きな大きなロボットが居ました。ロボットはいまの世にしてみれば旧式で、それも老朽化。機能の九割六分を失っていました。出来ることはといえば、よく迷子になる主人を捜すことくらい。ロボットの主人は、おじいさんでした。 ロボットが起動したのは、おじいさんの産まれた朝でした。ロボットはおじいさんの子守りをして、おじいさんと一緒に遊びました。やがておじいさんがお嫁さんと一緒になっても、ロボットは相変わらずその家に居ました。しばらくして、しばらくして。お嫁さんが亡くなりました。 それから少し経つと、おじいさんは色々なことを忘れていました。朝ご飯を済ませたこと、ひとりで散歩してはいけないこと、お嫁さんが亡くなったこと。けれどロボットのことを忘れたことはありませんでした。 ある日のこと。おじいさんが夕方になっても帰ってきませんでした。ロボットは保存食に魚の煮干しを持って、おじいさんを捜しに歩きました。三十分捜して、家に帰っても居なくて。一時間捜して、家に帰っても居なくて。迷子の放送を頼んでも、結果は芳しくありません。夜になりました。朝になりました。 一日経って布団を剥ぎ取ると、おじいさんは居ませんでした。ロボットは最後の手段とばかりに、なけなしの四分の機能を使うことにしました。アクセス。ダイアログ展開。オールチェック。OK。レッドレッドレッドレッドレッドレッドレッドレッドレッドレッドレッドレッドレッドレッド。追跡モード、グリーン。 ロボットは布団に落ちていたおじいさんの体毛を口に入れて、予測される匂いの成分を解析しました。情報を視覚センサーに送ると、ロボットの視界におじいさんの歩いた軌跡が赤く見えました。家の中はおじいさんの赤い軌跡で満ちていました。外に出れば、街は赤色。よく迷子になる主人の足跡だらけで、これではどこに居るのか分かりません。散歩コースを辿ると、住宅街から外れている一本道の軌跡を見つけました。道は山に続いていました。 赤い軌跡を辿って山に着いて。足跡は樹海へと続いていました。歩いて、歩いて、その先に。木の陰で横たわっているおじいさんを見付けました。 ロボットはおじいさんを埋めて、住宅街に戻りました。プスプスと煙を吹きながら歩きました。粗大ゴミ置き場を見つけると、そこに座りました。全機能を使い切った代償に、ロボットの思考回路は焼け焦げました。あと三秒ももたない思考、二秒、一秒、ブラックアウト。ロボットはゴミ収集車に回収されました。 その最後に。おじいさんと過ごした十九年間を、胸に焼き付けて。 2 捨てられた機械のパーツを異国に流している男が、骨董品のロボットを発見しました。そのロボットに使えるパーツなんてなかったけれど、代わりにお腹の中には不思議なものが入っていました。魚の煮干し。赤茶色の毛。猫の首輪。 (ss2-4.html/2004-12-04) /灰かぶり姫は居ないのにへ |
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01 黒猫のフーガ-Volevo Un Gatto Nero- 02 仔牛の翼-Donna Donna- 03 夜明けの晩に-Ring Ring- 04 おじいさんのロボット-Grandfather's Clock- 05 灰かぶり姫は居ないのに-Galopp- 06 ヴォルケイノサーカス-Funiculi Funicula- 07 ふたりの子-Seven's Children- 08 墓場の手紙-Massa's in De Cold Ground- 09 きみの居る世界-Barbara Allen- 10 銀色人形姫のソワレ-Eine Kleine Nachtmusik- 11 人魚姫のレクイエム-Requiem- 12 人魚姫のレクイエム-Die Lorelei- 13 ファイナルノスタルジア-Ikaros- 14 夢の夜の真夏-Midsummer Night's Dream- 15 隷属のラストサディスト-Traumerei- 16 悠久のリインカネーション-Jeux Interdits- 17 ほしのうた-Stille Nacht- 18 雪と月と花の季節-Those were the Days- 19 シュレディンガーの地球儀-Korobushka- 20 ノクターナルミレニアム-Hallelujah- |