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ノベル>KHM>星の銀貨 | ||
Die Sterntaler
1 昔々あるところに貧しい男が居て、男は腹を空かせては死にかけていました。 視界がグレー一色に染まった頃、一切れのパンを抱えた女の子と出逢いました。 上等な服を着ている彼女を見て、男はその貧富の差に絶望しました。 絶望したあとで嫉妬して画策しました。 ここは人通りの少ない寂れた道であり、女の子は見るからにひとり歩き。 それはそれなら―――こいつを殴り倒せば、パンも服もオレのものじゃないか。 そう思って女の子に近付いた男は、しかしその拳を振るうことなくパンを手に入れました。 対話のひとつもなく、暴力のひとつもなく。 女の子は男にパンを差し出したのでした。 2 昔々のあるところはみんながみんな貧しくて、多くの子供は裸でした。 身を寄せ合って寒さを凌いでいた子供たちは、上等な服を着た女の子を見つけました。 きっと貴族に違いないと勘違いした彼と彼女たちは女の子に群がって、意地悪なことを言いました。 「家に帰れば着替えがあるんでしょ? その服を僕たちにちょうだいよ!」 それはただの嫌がらせだったのですが、しかし意に反して女の子は服を脱ぎ始めました。 禿げている子供に帽子を被せて、痩せっぽちの子供に胴着を着せて、足を摺り合わせている子供にスカートを穿かせました。 その暖かさに興奮している子供たちは、女の子が居なくなっていることに気付きませんでした。 お礼のひとつも言っていないことを思い出した子供たちは、女の子を捜しました。 街のどこにも女の子の姿はありませんでした。 3 真っ暗闇の森の中で、女の子は別の子供に肌着を着せていました。 そうして裸になってしまった女の子は、ようやくひとりになりました。 ―――昔々あるところに貧しい女の子が居ました。 疫病で両親を亡くした彼女には、住む家も眠るベッドもありませんでした。 そんな彼女を哀れに思った貴族は、彼女に一切れのパンを与えました。 そして『人に優しくされること』の暖かさを体感した彼女は、与えられたパンをそのまま貧しい男に手渡しました。 母親の形見の服もすべて同じ境遇の子供たちに着せて、彼女はこの短い人生に満足しました。 真っ暗闇の森の中で、飢えと寒さで倒れる女の子。 見上げれば、星の銀貨――― 4 次に女の子が目を醒ましたとき、女の子はリンネルの肌着を身につけていました。 驚きながら身体を起こすと、ベッドの横に子供たちが寄り添っていました。 「やあ。やあやあ、やっと起きたんだね。もう三日間も眠っていたんだよ」 見上げればドアの前に男が立っていて、それはいつかの貧しい男でした。 それでもいまは上等な服を身に纏っていて、女の子は夢の中に居るのかもしれないと結論づけました。 「夢じゃないよ。言っても、オレにもよく分からないんだけど―――空から銀貨が、降ってきたんだ」 そう言って、男は女の子にパンとミルクを差し出しました。 受け取ろうとして女の子が掌を広げると、そこには銀貨が握られていました。 その彫刻は、いつか彼女にパンを与えてくれた貴族に酷似していて―――――― (khm153.html/2006-10-14) /02 ラプンツェルへ |
Kinder und Hausmarchen
Title 01 星の銀貨-Die Sterntaler- 02 ラプンツェル-Rapunzel- 03 兄と妹-Bruderchen und Schwesterchen- 04 ヘンゼルとグレーテル-Hansel und Gretel- 05 シンデレラ-Aschenputtel- 06 手なし娘-Das Madchen ohne Hande- 07 踊ってすりきれた靴-Die Zertanzten Schuhe- 08 森の中のおばあさん-Die Alte im Wald- 09 赤ずきん-Rotkappchen- 10 雪白と薔薇紅-Schneeweischen und Rosenrot- 11 狼と七匹の仔山羊-Der Wolf und die sieben jungen Geislein- 12 賢いグレーテル-Die kluge Gretel- EX ハウスメルヒェン・ダイアログ EX 子供たちが屠殺ごっこをした話 /グリム・インデックスへ |