梅
ログリバーシブル・リバース>リバーシブル・リバース[後編]
Reversible Rebirth[B]
0.Oracle Wedding

 ねー、おーかみ。
 なんだ、わんこ。
 おーきくなったら、けっこんしてくえる?
 なんでやねん。
 けっこんしたら、ずっといっしょにいらえるかや。
 ばかだな、いちこは。
 ばかじゃないもんっ。
 けっこんしなくても、ずっといっしょにいられるだろ。
 そー、なの?
 そうだよ。おまえはオレのいもうとなんだから。

 おおきくなっても、ずっといっしょだ。
 ―――わーいっ。
1.Corpse Party

 妹が死んだ。
 オレは母親の姉の家に引き取られた。
 叔母には優しい旦那がいて―――
 ひとり娘がいた。

 幼稚園児。
 同い年。

 あまり憶えていないけれど。
 ずいぶん優しくしてもらったような記憶は、ある。
 受け入れることはできなかった。
 妹は幸せになれなかったのだから。

 食欲もなければ。
 笑うこともない。

 賃貸マンション。
 中流家庭の―――下の方。
 叔母はパートに出ていた。
 娘は幼稚園を休んで、やたらとオレに話しかけてきた。
2.Cast-Off Shell

「ねーねー」
「おはなししよ」
「どこからきたの?」
「どこへゆくの?」
「…………」
「じゃ、あそぼうよっ」
「なにしてあそぶ?」
「ファミコン?」
「シルバニアファミリー?」
「ツイスターゲーム?」
「…………」
「おやつにしよ」
「きょうはねー、プリンたべていいって」
「あと、ぎゅうにゅうあるよ」
「ひとりでたべるとおぎょうぎわるくなるからだめなんだよー?」
「…………」
「おーかみさん」
「かまってよう……」
3.

「すずのおと?」
「あ、かわいいなー、それ」
「そのすずは……たいせつなものなの?」
「だったら―――」

「やっとおきてくれた」
「ないてるの?」
「ごめんね」
「いいこいいこ」
「かなしいことがあったんだね」
4.

「でも、だいじょうぶだよ」
「わたしがかわりになってあげるから」
「だからなかないで」
「いっしょにあそぼ」
5.

 積み木崩し。
 砂のお城を破壊して。
 いじめるようになる。
6.

 幼稚園に行くようになった。
 ふたりはいつも一緒だったが、先生たちはむしろ引き離そうと努力していた。
 それでも、支倉大神の傍にいようとする長峰鈴音。
 勝手にお弁当を食べたりとか。
 積み木崩し。
 砂のお城を破壊して。
 馬にして、抱き枕にして。
 それは乱暴な扱いだった。
 だけど構われることそれ自体は嬉しくて。
 泣きながら裾を掴む彼女は、まるで本物の妹のようだった。
7.Decade

 小学校時代。
 スカートめくり。
 スカートおろし。
 ロッカーの中に閉じ込めて。
 かくれんぼの鬼になっては、放置プレイ。

 プリンを盗んで。
 代わりに牛乳をたくさん飲ませたりとか。

 待ち合わせ、先に草葉の陰に隠れて様子を見るお遊び。
 一時間くらい経ってから登場する。

 バレンタイン。
 クラスメイトの数だけ作られたそれを全部食べて、
 ホワイトデーに牛乳を三十パックプレゼントする嫌がらせ。

 衆人環視の中ブラジャーを盗んでみせた。

 そして無為に十年の月日が流れる。
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