カーネーション
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Girl in the Box[Cube]
  15

 小鳥が鳴いて、朝になった。
 鳴るより前に目覚まし時計を止めて、その腕で布団をめくる。
 僕の胸板に顔を押しつけて眠る少女。
 人の身体を抱き枕にして、僕の寝間着を握りしめている。
「朝だよ、早く起きないと遅刻するよ」
 さながら幼馴染みのようなことを言って、その小さな肩を揺する。
 僕の胸板に顔をこすりつけてから、ゆっくりと目を覚ます少女。
「あと10分だけ寝かせて」
「あと10時間ばかり寝るといいよ」
 ベッドから追い出すと、スーツケースから歯ブラシを取り出して部屋から出ていく少女。
 戻ってきて、テーブルの上に置いてあった緑茶のペットボトルを口にする。
「今日は学校だから、本当に10時間くらい出してあげられないんだけど」
「分かった」
 少女は寝間着のままスーツケースに潜り込んだ。
 腕を下に敷いたりしないよう、器用に身体を丸めていく。
 従順な姿に安心するが、しかし。
「声を上げたりしないって、改めて約束できる?」
「うん」
 それでも、1時間ずつ加算していった最長4時間から、いきなり10時間だ。
 学校から帰るまで途中で開けることもできないというのは、未知の体験である。
 少女のことを信用はしているが、その恐怖は計り知れず、途中で根を上げるかもしれない。
「口にガムテープを貼っていい?」
 少女は答えなかったが、僕は棚からガムテープを取り出して、一口サイズに千切った。
 少女の頭を少しだけ持ち上げて、押しつけるようにして口に貼りつける。
 少女は嫌がっているように見えたが、とくに抵抗はしなかった。
「おやすみ、リカちゃん」
 まるで永遠の眠りにつくように言って、僕は蓋に手をかけた。
 口を塞がれて目を瞑っている少女を見納めて、蓋を閉じる。
 体重をかけて、留め具をかけて、鍵をかけてからスーツケースベルトを締めた。
 ベッドの奥に押し込んで、鍵を財布の中に仕舞う。
 時間が余ったので、二度寝することにした。
 目覚まし時計をもういちどセットして、ベッドに潜り込む。
 少女が隣にいないので、久しぶりに手足を伸ばしてベッドの広さを堪能することができた。
 少女はいま懸命に身体を丸めて窮屈な思いをしていることを思うと、たまらなく幸せだった。
 微睡んで、そのまま熟睡してしまう。
 目覚まし時計の音で目覚めた頃には、少女のことなど忘れてしまっていた。

  16

 着替えて顔を洗ってご飯を食べて、部屋に戻って鞄を手に取る。
 少女のことを思い出して、ベッドの方を見やった。
 いまから10時間、一切の身動きも許されず、食事も水分も摂れずに監禁される少女。
 さっきまで寝ていたから、ろくに眠ることもできないだろう。
 ついには助けを呼ぶことさえ封じられて、否応なく僕の帰りを待つしかないのだ。
 死なせてしまうかもしれない恐怖と一緒に、たまらない快感を覚える。
 僕は少女に手を振って、部屋を出て、家を出た。
 学校に到着する。
 退屈な授業さえ充実した時間のように思えた。
 休み時間になると、矯正を上げてはしゃぐクラスメイトの女子。
 比べれば、うちの子はなんて可哀想で可愛いのだろう。
 寒いばかりの体育の授業さえ、身体を自由に動かしてはテンションが上がる。
 昼休みになって、学食を平らげていると、少女に朝ご飯を与えていないことを思い出した。
 きっとお腹を空かせていることだろうと、鍵を見つめながら思った。
 授業を終えて、部活動を終えて、少女の夜ご飯を買ってから家に帰った。
 ただいまを言う相手を見つけて、家族団欒の夜ご飯を食べる。
 人間はとんでもない量を食べて、何度も排出して生きているということを自覚した。
 部屋に戻って、鞄を置いて、ベッドの下からスーツケースを取り出した。
「ただいま」
 魔法の言葉で挨拶をしても、返事などあるわけがない。
 口をガムテープで塞いだのは、いくらなんでも酷かったのかもしれない。
 いままでとは打って変わって10時間だ。
 さすがに泣き濡れているかもしれないし―――鼻が詰まって、死んでいるかもしれない。
 その可能性はあんまり考えていなかった。
 取り返しのつかない恐怖と、罪悪感で胸が締め付けられる。
 財布から鍵を取り出した。
 考えてみれば、この財布を失くすだけでこの子の命は燃え尽きたのか。
 鍵を錠に挿し入れて、回した。
 スーツケースベルトを外して、留め具を外す。
 恐る恐る蓋を開けると、綺麗に収納された少女の姿。
 人形のように、まるで変わらない。
 両脇を掴んで引っ張り出す。
 まるで動かず、息もしていないように見える少女。
 ガムテープを引っぺがしても、返事がない。
 本当に人形のように思えて、怖くなる。
 あるいは、死なせてしまったのだろうか―――
「ん……」
 かすかに声を上げて、眩しそうにする少女。
 抱きしめると、そこが定位置なのか、僕の胸に顔をこすりつける少女。
 泣いているように見えたが、あるいは匂いをかいでいるのかもしれない。
 シャツのボタンの隙間から、僕の胸を舐める少女。
 口でボタンを外して、お腹の方まで舌を這わせる。
 そして脇腹に噛みついた。
「…………!」
 我慢していると噛み跡を口に含んで、優しく舐めた。
 もしかしたら、僕の汗を舐めて水分と塩分を摂取しようとしているのかもしれない。
 いつまでも舐め続ける少女の献身に満足して、僕は少女を引き離した。
 鞄の中から飲み物と食べ物を差し出す。
 少女は目を光らせて、僕の身体を杖代わりにして立ち上がり、手を洗いに行く。
 戻ってきて、はにかみながら言った。
「おかえりなさい」

  17

 割り箸を手に食事を摂る。
 10時間振りの水分、24時間振りの食事である。
 幸せそうに食べて、歯を磨いて、またスーツケースに潜り込んだ。
「いや、今日はもういいよ」
 スーツケースから引っ張り出すと、不思議そうな顔をして手持ち無沙汰にする少女。
 なんとなく携帯ゲーム機を手渡すと、素直にパズルゲームで遊び始めた。
 初日は言わなかったが、少女は普段ゲームをやらないらしい、とても下手だった。
 それでもやっぱり子供らしく、飲み込みが早い。
 僕は宿題を終えて、ノートPCを起動した。
 ゲームを中断して、棚を漁り始める少女。
 手癖が悪い、といえばいいのだろうか。
 SIMカードの挿入されていない携帯電話を発見された。
「これ欲しい」
「……あげるよ」
「本当?」
「その代わり、胸を揉ませて」
「やだ」
 どさくさで何度か触っているのに、よく分からない。
「パンツ見せて」
「やだ」
 水着と下着の違いを教えて欲しい。
「×××××を」
「よく分かんない」
「身体を舐めさせろ」
「イヤ」
「僕の全身を舐めろ」
「…………」
 いちばんハードなところでルーレットは停止した。
 全身の中にあんなところやそんなところが含まれるとは、夢にも思っていないのか。
 少女は、目を瞑りながら頷いた。

  18

 ふたり水着に着替えて、電気を消してベッドの中に。
 上に覆い被さる少女は、どこか幻想的だった。
 肌と肌が触れ合って、痺れるほどに暖かい。
 能動的な少女というのは、普段とは対照的でドキドキする。
 少女は自らに布団を被せて、僕の首から下と一緒に消えてしまった。
 少女の半端に長い髪がお腹に触れ、こそばゆい。
 そして少女は、僕のおへそにキスをした。
 柔らかい舌を押しつけるようにして、ゆっくりとお腹全体に舌を這わせていく。
 ちろちろと優しく舐めて、徐々に胸の方へと上がっていく。
 乳首にキスをして舌で転がす様は、まるで赤子のようだった。
 たっぷりと時間を使って胸板を舐める。
 僕は期待と意地悪で腋を上げて、舐めるように誘導した。
 これで嫌がるなら可愛いものだと思ったけれど、
「ぺろぺろ」
 ためらいもなく僕の腋に舌を這わせる少女。
 腋毛を舐めるザリザリとした触感を味わいながら、僕は少女の奉仕に感動していた。
 まだお風呂にも入っていないのだ、汗の味がするだろうに。
 喉を鳴らして、延々と腋を舐め続ける少女。
 誘導しているせいか、一向にやめる気配がない。
 僕が満足するまで舐めさせてから、そのまま反対の腋も舐めさせた。
 いくらなんでも、こんなに従順だとは思わなかった。
 首筋を舐めさせ、肩から腕にかけて舐めさせる。
 少女は丁寧に、丹念に舐めるのでこれだけで結構な時間が経過している。
 暑くなって掛け布団を取ると、ゆだりながら懸命に舐めている少女の姿。
 この世の王になった気分だった。
 上半身を起こして、膝を立てる。
「お茶、飲んでいいよ」
 首を横に振る少女。
 普段は気まぐれなくせに、どうしてこういうときは健気なのだろう。
 土下座をするようにして、僕の足の指にキスをする少女。
 口に含んで、汚れを落とすように柔らかい舌をこすりつけてくる。
 すべての指に挨拶をしたあと、足の裏も舐めるよう誘導する。
 少女は願いを叶えるように足の裏をねぶり、綺麗にしていった。
 臑を舐めて、膝を舐めて、太ももを舐める少女。
 内ももを舐められると、たまらなく気持ちよかった。
 そのまま水着の中まで舌を這わせる少女。
 あまりの衝撃と期待に興奮して、僕は少女の頭を掴んで、股間に顔を埋めさせた。
 硬くなったそれを押しつける。
 少女は離れようともせず、スンスンと匂いをかいで、水着の上から舌を這わせた。
「…………!」
 予想していたよりずっと抵抗がない。
 案外、最初から説明していれば、どんなところだって舐めてくれたのかもしれない。
 しかし、とはいえ……ここまでやらせてから言うのもなんだが、一線を越えていいのだろうか。
 僕はこの子と付き合っているわけでもないし、ちゃんと世話をしているわけでもない。
 なによりキスも交わしていない子にこんなことさせるのは、酷い犯罪なのではないだろうか。
 考えていると、少女は顔を上げて、僕の目をじっと見つめた。
 たまらなくなって、僕は聞いた。
 嫌ならハッキリと断る子だから。
「水着の中も舐めてくれる?」

  19

 太ももの付け根に舌を這わせて、玉裏を丹念に舐めて、焦らすようにゆっくり竿を舐める。
 あるいは、この子なりに怯えているのかもしれない。
 他に舐めるところがなくなって、少女は諦めたように―――亀頭に、キスをした。
 感動のあまり、とろけそうになる。
 ちゅっちゅっと啄むようにキスをして、ぺろぺろと先端を舐めた。
 どんな味がするんだろう。
 僕は舐めるばかりの少女を存分に堪能したあとで、言った。
「くわえて」
 言われるままに口に含んで、柔らかい舌を押しつける少女。
 健気に舌を絡めてきて、たまらなく気持ちいい。
 ずっとこのまま舐めて欲しいという思いと、口の中に出したいという思いが綯い交ぜになる。
「もっと奥まで」
 なにも言わず、大人しく従う少女。
 かなり無理しているのか、亀頭が口蓋垂に当たっている感じがする。
 口から空気を抜いて、口の粘膜を全体に張り付けて、
 唾液をたくさん出してから頭を前後に動かして―――
 色々と指示を出してはみるものの、僕も初めてなので正直どうすればいいのか分からない。
 少女は懸命に頑張ってくれているけれど、射精するには刺激が足りない。
 僕は少女の頭を押さえつけて、そのまま腰を振った。
「んっ……!」
 初めて嫌がる少女。
 それでも抵抗はしなかった。
 少女の気持ちなんて一切考えず、喉の奥に出し入れを繰り返す。
 少女は微かに喘ぎ声のようなものを上げ、余計に興奮する。
 すぐに出すのが惜しくなって、気持ちのいいところで緩急をつけて何度も何度も腰を振った。
 最初は嫌がっていた少女も、懸命に舌を絡めてくれる。
 そんなに携帯電話が欲しいのだろうか。
 それで助けを呼べるわけでもあるまいし、そんなことも分からないのだろうか。
 頭を強く押さえつけて、腰を深く深く突き入れて喉の奥で果てた。
 否応なく飲ませて、残留した精液も少女の舌にこすりつけてから解放した。
「けほっ」
 息を切らせて苦しそうにする少女。
 あっさりと、涙目を見ることができた。
「……ごめん。やりすぎた」
 反射的に首を横に振る少女。
 それだけで、僕はもうこの子のことを捨てられなくなってしまいそうで。
 賢者になった僕に、少女は言った。
「背中とお尻は、舐めなくていいの?」
(nn2-4.html/2011-11-24)


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