カーネーション
ノベルリレーノベル>カモンベイビー★クリスマス>サンタコロース・シンアシン
Strangulated Santa-Claus
サンタコロース・シンアシン晴一時雨さん
Side-C/


  ◇


 母親から初めて渡されたプレゼントを握りつつ、僕は居間のソファーでゆっくりしていた。
 正直早く寝たいんだけどね、お父さんが階段を上るのが見えたから、あぁ、なるほど、これはおそらくあれですね、プレゼントですね、と。今部屋に戻るのはまずいな、と。今居間から部屋に戻るのはまずいな、と。山田君!座布団全部持ってきなさい!
 お母さんはあたしの賢い息子、と言っていたけど、僕の賢さは次元を越していると自負している。そんじょそこらの賢さと比べられたら困る代物。特別定価1829万!消費税はサービス!わぁ、これは買うしかないよね。えーと0120・・・。
 賢すぎるが故にすぐに論点がずれてしまうのが残念なところ。この間テレビでやっていたIQを測る番組では、表向きは130程度で留めておいたけど、実は全問正解でじっちゃんの孫ぐらいあったんだよ、と。もっと上の数値が出る自信があったけど、それ以上はテレビじゃ測れないという残酷。天才は変人で、変人は社会から零れ落ちる。そうやって僕の"すぺさる"なIQも測られずじまいってこと。おいおいおい、人権の侵害じゃないのか!僕にも正しいIQを測れる権利をおくれ!オクレ兄さん!
 ついでに言うと、僕はお父さんがこの元サンタクロースに何を頼んだか知っている。正確にはそれはただの推論なんだけど、その推論はとても事実に近い。事実に近いっていうのは、僕のお父さんがよっぽど頭が良いか、よっぽど頭が悪いか、要は変人じゃなければ確実にそうするだろう、ということ。100%じゃない限り、推論は事実になることを許されないからね。
 んで、その物が何であるか。鬼嫁と名高いお母さんに知られてはいけないもの。トイザらスに売ってるもの。巨大靴下に入ってしまうもの。僕の関与を許さないもの。
 きっとオムツやお尻拭きなんだろうなぁ。
 お母さんのお腹の中には子どもがいる。2人はそれを知っているけど、僕は知らないことになっている。サンタクロース問題なんて、どうでも良くなるぐらい重大な事実。
 お父さんは変にロマンチックなところがある。変に。特にサプライズをこよなく愛す男なんだよね。まぁでも、遠足の前日にお母さんが風邪で倒れて、代わりにお父さんが作ったお弁当に、のりで「おとうさんがつくりました」って書かれていたのは最悪だったなぁ。恥ずかしい以外のナニモノでもないし、具との敷居がきちんとセットされてなくて、林檎にソース。エビフライにブドウ汁。もう死んでしまえばいいのに、とか親不孝なこと思ったりしたくらいだよ。
 そんな変にロマンチックなお父さんのことだから、
「じゃーん!オムツとお尻拭き買っておきましたー!!」
「まぁ、あなたったらなんて素敵なことしてくれるの!大好き!」
 みたいな展開を予想してるんだろうなぁ。バカか。お母さんと10年以上付き合っていて、そんなことなるはずないっていうことが判らないだろうか。判らないんだろうなぁ・・・。よくトイザらスで出世できるよなぁ。おもちゃ会社はロマンがあれば出世出来るのかなぁ。ということは僕には無理だね。
 でさ、何で僕の関与が許されないかというと・・・、ねぇ、元サンタクロースさん。ううん、サンタコロースさん。さっきの僕の演技、どうだった?なんちて。




Side-D/


 昔の夢を見た。
 ついに「子どもをプレゼント」サービスを始めるなんて言いだしたサンタ長に歯向かった私は、その場でサンタ長を殺害。既に作り上げられていた一つの生命体を持ち出し、 (株)プレゼントフォーユーから飛び出した。
 人間の創造だなんて、そんなの同じ人間である私たちに許される行為のはずは無いから、この生命体はトナカイにでも食べさせようと思っていた。でもよく考えたらトナカイは草食動物だから、無理なのに気付いた。
 のは、トナカイに必死にその子を食べさせようとし始めてから1年が経った頃だった。おかしいと思ったんだよね。全然口に入れようとしないから。
 生命体は立派な人間の形になってしまったので、私は完全にそれを持て余してしまった。育てようか、どうしようか、うーん、いいや、どっかに捨ててきちゃえ。
 決断は早かった。5秒ぐらいしか掛からなかった。今思えば、人間を作り出そうとするサンタ長と、それを殺して作り出された人間をトナカイに食べさせようとした挙句破棄しようとする私と、どちらが非人道的でこの世に居てはならない存在なのかが問われる。まぁ私の方に手を挙げた人間は片っ端から除名するけどね。いろんな意味で。
 どこに捨てようかな、と物色中に、私はある子どものいない夫婦の家を見つけた。結婚して随分経つが子どもが出来なくて困っているらしい。ほぅ、結婚1年半か・・・。やっぱり人間として捨てるのはどうかな、と思ったのと、その日がクリスマスイブの夜だったことも相まって、私はその家の煙突から子どもをクリスマスプレゼントとして放り込んだ。
 りしたかったんだが、その家には煙突なんていう西洋の建造物はなかったので、 2階の窓からそっと忍び込んで、脱ぎっぱなしだったダンナの靴下に入れようとした。もちろん入るわけが無かったので、プレゼントの両足にそのダンナの靴下を履かせてその場を後にした。
 それから10年弱。身を隠すのと身分を偽るために、トイザらスに就職した私は、その靴下の持ち主と再び遭遇した。向こうがこちらを知るわけもないのだが、話を聞く限り子どもを大事にする良い父親らしい。へぇ、そうなんだ。あ、でもこれでいざという時道連れに出来るかも。盾になるかも。
「この男が無理矢理サンタ長を殺して!」
 ってね。
 でもね、まさかここまで来て再びサンタの格好をするとは思わなかったよ。本物には許可取ってるのかなぁ。まぁサンタ長が死んだからあのあとしばらく混乱続きだったろうから、許可無しにやってもばれないだろうけど。というか本物は最近機能してるのか?
 いや、そんなことは今となってはどうでもいい。問題はこの夫婦に本当に子どもが出来てしまったという事実。この子、かずみと名付けられたこの子はどうなってしまうのだろうか。 ん、っていうかこの子戸籍あるのか・・・?学校に行ってるみたいだからあるのか・・・。いったいどうやったというのか。
 いや、だから今はそんなことどうでもいいんだってば。
 この子は私が責任持って回収すべきなのだろうか。しかし当の本人はこの事実を知らないだろう。覚えているわけが無い。結局はこのバカ夫婦に委ねるしかないというのか?
 私は、眼が覚めた。
(rn1-3.html/2005-12-25)


/ホワイト・サンタクロースへ
Come on Baby★Christmas
Title
01 ファントム・サンタクロース
02 ブラッディ・サンタクロース
03 サンタコロース・シンアシン
04 ホワイト・サンタクロース
EX あとがき座談会
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