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ノベル>リレーノベル>カモンベイビー★クリスマス>ブラッディ・サンタクロース | ||
Bloody Santa-Claus
ブラッディ・サンタクロース|小森 Side-A/ 舞台裏を覗かれた役者は死ねばいい。 ◇ ソファーに座ったあたしを膝枕にして眠っている"サンタクロース"。 あたしは彼の首元で凶器の鞘を抜いた。 するとそこに――― 「彼だって努力したんだよ」 処刑をやめるよう促す夫の姿。 けれど悲しきかな、この家では夫より妻の方が強い。 鬼嫁だからね。 「努力しても達成できないのなら、死んだ方が早いわ」 そう言って、あたしは躊躇なく刀身を振り下ろして。 そのでっぷりと太った鼻を赤く染め上げた。 「ああ……」 夫は目を伏せて、肩を震わせた。 笑っていた。 凶器の名はマジックインキ(赤)。 その性能は"サンタクロース"を"トナカイ"に格下げすることにある。 「お母さん……?」 階段から降りてきた息子。 見られた。 「かずみ。もう眠る?」 首を横に振る息子。 当たり前だけど。 「ねぇ、どういうことなの?」 当たり前の疑問を口にする息子。 さてと。 ダイアログ展開。 ◇ 「当たり前の話、サンタクロースは父親よね」 「え? 知っていたことを、知っていたの?」 「それはもう。あたしの賢しい息子だもん、そんなくだらない議題で悩んだりしないわよ」 「あ……うん、そうだよね……」 「それでもこの家は当たり前じゃなくてね、父親がサンタクロースなのよ」 「え? だから、父親がサンタクロースなんでしょ?」 「うん。あなただけのじゃなくて、日本中のね」 「えぇ? だって、お父さんサラリーマンじゃん」 「勤め先は?」 「トイザらス……」 「そう。だから……」 「そのトイザらスのサンタクロース係なのよ、お父さん」 「えぇ……?」 「トイザらスはサンタクロースを商売にしたのね」 「商売……」 「当店お買いあげ商品を聖なる夜に届けます、みたいな」 「サンタクロースの格好で……?」 「うん」 「じゃ、その人……」 「お父さんと同じく、サンタクロース係の人」 「お父さんとお母さんの知り合いなの?」 「えぇ。サラリーマンの嫁になるというのは、そういうことよ」 「そう……」 「お父さんは、サンタクロースだったんだね」 「そう。サンタクロースが父親なんじゃなくて、父親がサンタクロースなの」 「でも、どうして僕にはこの人が?」 「担当地区が違うからね」 「なるほど……」 「サンタクロースを商売にしたけれど、結局流行らなかったのよね」 「そうなんだ」 「だからアルバイトを雇うこともなく、社員であるお父さんやこの人が担っているのよ」 「ふぅん……」 「だけどサラリーマンの嫁であるあたしは、流行らないそれを使わないといけない」 「大変だね」 「そうよね……」 「だからあたしは、かずみにプレゼントを渡したこと、ないのよね」 ◇ "トナカイ"に格下げされた"サンタクロース"の袋をまさぐる。 見付からないので、懐中電灯を片手に袋に潜り込む。 気分は頭を隠してお尻を隠さない猫のよう。 「……なにしてるの?」 「クリスマスプレゼントを探しているの」 着払い票も現金も一緒くた。 ものの整理ができないサンタクロースは死ねばいい。 ……と、ゲームソフトコーナー発見。 「……ぷはっ」 「おかえり」 「ただいま」 それと。 「メリークリスマス、かずみ」 聖なる夜に『SIMPLE2000Vol.81 THE 地球防衛軍2』をプレゼントした。 それがあたしからの、初めてのクリスマスプレゼント。 Side-B/ お父さんは、サンタクロースだったんだね。その息子の言葉を最後に俺は居間から去り、二階に上がった。嫁にも息子にもバレていない。その嫁に睡眠薬を飲まされている"サンタクロース"など気付くわけもない。まこと鬼嫁である。彼女は身内にも他人にも鬼嫁だ。この舞台の中で最も敵に回しちゃいけないのがアイツだな、と俺は再認識した。しかし今日の俺は嫁を裏切らなければならない。理由は"サンタクロース"の持ってきたクリスマスプレゼントにある。そう、クリスマスプレゼントだ。サンタクロースは「ガサガサゴソゴソといった物音」を不自然なほど長く出していた。メリークリスマスと告げることで"サンタクロース"が俺じゃないことがバレてしまったけれど、それでも彼はプレゼントを靴下に入れている。そうだ。視点が母子に移ったことにより語られなかったけれど、次の走者が着目するかどうか分からない限りこの俺が見に行くしかあるまい。巨大靴下(紙製)にギリギリ入る代物。地球防衛軍変身セットではありえまい。なんだろう、なんだと思う? アダルトビデオかな? エロゲーかな? SMグッズがな? どきどきする胸を押さえながら部屋のドアを開ける。ぎいい。枕と反対方向に置かれた紙製の巨大靴下。この部屋は、まるで撮り終わったシーンのように静かで。なにも起こりえないという雰囲気に包まれている。それはそうだ、これがリレー小説じゃなかったらこの部屋に父親が一人で再登場する機会はなかっただろう。どきどきするね。まだどんな伏線が回収されていないものか分からないからね。その大きな伏線であるクリスマスプレゼントに挑む俺。さて、中身はなんだろう? 明かりを付けて巨大靴下に近付いてゆく。ちなみに先に挙げた三つでは有り得ない。トイザらスは子供の玩具屋だ。ではなんだろう? 煙草に火をつけて考える。あっ、俺煙草吸えないんだった! げほげほ。あー、換気しよう換気。ガラガラ。すーはー、すーはー。……時間まだ? あっ、深呼吸したらマット運動したくなったぞ。おあつらえ向きに布団が敷いてある! とりゃー、前転! 後転! 側転! バク転! できねぇよ! ハァハァ……疲れたなぁ。煙草でも吸うか! 吸えねぇよ! あれ? 俺なにしに来てたんだっけ? あっ、そうだよクリスマスプレゼントじゃん! じゃんじゃん! 靴下靴下……あったあった。ここから二メートルの距離だね。正確に言うと二百九センチ。ジャイアント馬場の身長と同じだ。いやいや、彼の活躍はすごかった。ジャイアンツに所属していてね……って野球かよ! みたいなね。俺生まれてねぇよ! みたいなね。残念! みたいなね。さていい加減で靴下の中身を見ようかな。なんて、実は答えは分かっているのだ。だってこれは俺が"サンタクロース"にお願いしたものだからね。条件はトイザらスで扱っている商品で、鬼嫁の目から隠したいもの。そう、それは―――!(時雨さんに続く!) (rn1-2.html/2005-12-25) /サンタコロース・シンアシンへ |
Come on Baby★Christmas
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