梅
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First Dialogue
Monologue
春狩冥子。新入生。
夜ごと記憶を失い続ける女の子との対話。
  
04-08[Thu] Entrance Ceremony
「遅刻遅刻ー!」
『どっかーん!』
「しまった、道行く女の子と衝突してしまった!」
『いえいえ、ぼーっとしていたわたしが悪いのです』
「……それじゃ、ボク急いでるんで!」
『さようなら』
入学式。


04-09[Fri] Greeting Card
「キミは昨日の!」
『こんにちは』
「ここの生徒だったのか」
『一年六組の春狩冥子と申します』
「これはこれはご丁寧に」
『あなたの名前は?』
「二年六組の支倉大神」
『ハセクラオオカミ』

『はじめまして、支倉先輩』
「キミは挨拶を大切にする子だね」
ハルカリ・メイコ。

04-12[Mon] Physical Examination
「今日は楽しい身体測定!」
『百四十四センチ三十五キロ』
「……それはキミの測定結果?」
『はい。先輩は?』
「えっと、百五十八センチ四十七キロ」
『大体予測通りですね』
「な、なんで手帳に数字を記入しているのカナ!?」
パーソナルデータ。

04-13[Tue] Foget-Me-Not
「しかしキミとはよく会うね」
『三回目の再会ですね』
「出逢ったときのこと、憶えてる?」
『憶えていません』
「五日前のことも憶えていないのか!」
『ごめんなさい』

『わたしの記憶は、一日しか保たないのです』

『眠ったら死ぬのです』
「雪山のような人生だね……」
忘レナ草。

  2

04-14[Wed] Forrest Gump
「好きな花は?」
『桜です』
「好きな動物は?」
『電気羊』
「好きな言葉は?」
『一期一会です』

『先輩は?』
「女の子が好き!」
フォレスト・ガンプ。

04-15[Thu] Sexual Harassment
『支倉先輩のターン』
「奥義・スカートめくり!」
『今日はジーンズなのですが』
「脱がせるのならパンツの方が燃えるよね!」
『同意の上でないと不可能だと思いますが』
「ボクを誰だと思っている?」

「この物語の主人公だぜ―――!」
『それはわたしのベルト……!』
セクハラ狼。

04-16[Fri] Perfect Crime
「秘奥義・ゴートゥベッド!」
『ベッドなんて、保健室にしかないのでは?』
「ボクは保健委員なんだ」
『なんて最悪の組み合わせでしょう……』
「あとはこのクロロフォルムを嗅がせれば!」
『わたしの記憶を消し飛ばす気ですか!?』
完全犯罪。

04-17[Sat] Sexual Violence
「キミはどこまでをセクハラだと思う?」
『どこから、じゃないんですか?』
「それはスキンシップからだろう」
『……それなら、スカートめくりまで』
「キスや膝枕は駄目なのか?」
『膝枕はいいですよ』
「そうか……」

「キミがボクに抱く好感度は星三つだね」
『わたしは誰に対しても星三つです』
ラブ・オブ・ピース。

  3

04-19[Mon] Thousand Diary
『わたしの記憶は一日しか保たない』
「それは眠るたびに自分を失うという恐怖」
『初めて記憶を失った三年前から書き続けている日記』
「それは自らを記号化する儀式」
『そして再会を刻み続ける人物辞典』
「キミは本当は、すべての人と初対面なのに―――」

「それなのに、積み重ねられた過去を再現し続けるのか」

「―――ところでボクのこと、なんて書いてるの?」
『変態! セクハラ狼!』
「なにもかもが台無しだ!」
サウザンド・マスター。

04-20[Tue] Last Alphabet
「しかし忘れ続けるのなら、勉強する意味なんてないんだね」
『意味を求めて勉学に励むのは悲しいことです』
「……え? いまなんて?」
『連立方程式の解を求めることに意味を見いだせないのと同じように、』

『わたしには、好きなアーティストの歌詞を憶えることに意味を見いだせません』

『意味のあることは自然と身に付くはずです』
「小学四年生に言い負かされている気分だ……」
アルファベットは書けない。

04-21[Wed] Trauma
「どうしてキミの記憶は一日しか保たないのだろう」
『医者に診て貰ったわけではないので、よく分かりません』
「……病院に行っていないのか?」
『はい。お父さんが、その必要はないだろうって』
「そうか……」

「キミは貧乏属性も兼ね揃えていたのか……!」
『いえ、普通にお高いマンションに住んでいますが』
ブラック・ジャック。

04-22[Thu] Welcome Party
『明日は新入生歓迎会ですね』
「歓迎会とは名ばかりの、部活動の勧誘会だけどね」
『先輩はどこの部なんですか?』
「もちろん帰宅部さ!」

「明日はキミの家に帰宅するよ!」
『そういう部活動ではないはずです!』
カッテシッタル。

  4

04-23[Fri] Home Party
『……あなたは?』
「ああ、学校じゃないから分からないんだね」
『ごめんなさい』
「いいよ。キミの部屋はナンマルナン号室?」
『十三階の七号室です』
「おっけー、悪いけど今日はちょっと遅刻しようか」
『分かりました』
ヒトノイエ。

04-23[2] Wedding Dialogue
『お父さん、友達を連れてきたよ』
「お嬢さんをボクにください!」
『恋人だったんですか!?』
「お父さんよりは幸せにできる自信があります!」
『しかも喧嘩を売っている……!』
「アンタみたいな男が居るから―――!」
『お父さんが殴られた!』

『でも何故か、せいせいとしているわたしが居ます』
「うるさいよ計画犯」
セクシャルバイオレンス。

04-23[3] Winding Load
「キミはお父さんと一緒に眠るとき、記憶を失うんだ」
『よくそんなことが分かりますね』
「伊達にセクハラ狼を名乗っているわけじゃないからね」
『あ―――支倉先輩』
「思い出してくれた?」
『いえ、その表現はあまり正しくありません』
「人物辞典の特徴と合致した?」

「今日からひとりで眠りなさい、春狩冥子」
『幸せにしてくれるんじゃ、なかったんですか?』
パトカーの中で。

04-23[4] School Days
「そして遅刻した新入生歓迎会」
『出席を取るのが帰りのHRで助かりました』
「皆勤賞でも目指してるの?」
『はい。誰かに憶えてもらわないと、わたしの人生は成り立ちませんから』
「人はひとりではとてもじゃないけど生きていられないからね」
『だからわたしは、登校部を創ることにしました』
「登校部?」
『迷わずに学校に行くことを常とする部活動です』
「当たり前のことだよね」
『帰宅部の人に言われたくありません』
登校部、部長。

  5

04-26[Mon] ????????
「遅刻遅刻ー!」
『どっかーん!』
「しまった、道行く女の子と衝突してしまった!」
『いえいえ、ぼーっとしていたわたしが悪いのです』
「……って、春狩冥子じゃないか」
『…………』

『誰?』
「…………憶えて、いないのか?」
へのもへ。

04-27[Tue] ????????
『寝て起きて、最初にすることは日記を読むことなんです』
「それは聞いたよ。ごめん、キミの言葉は十手先まで聞いている」
『そうですか……』
「だから質問をすることにしよう」
『どんと来てください』
「キミはお父さんに虐待されていた」
『はい』
「性的虐待を受けていた」
『いいえ』

『お父さんと一緒に寝たことなんて、ないですよ』
アカズの棋士。

04-28[Wed]
04-30[Fri]
(log7-1.html/2007-04-30)


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